“バーニング・コート”「そしてそこより処刑の場へ……主が汝の魂を憐れみ給わんことを」
ピーター・ウィムジィ卿
イントロダクション
■ はじめに
このシナリオは19世紀末のイギリスを舞台にしています。最適プレイヤー数は3〜4人、予定プレイ時間は5〜6時間です。謎解きと交渉をメインとした高難度のシナリオであり、またシナリオ終了時にはプレイヤーの行動を得点評価します。
ある程度TRPG経験を積んだプレイヤーに向いたシナリオです。プレイヤーにクトゥルフ神話および時代背景に関する知識は必須ではありませんが、あったほうがより楽しめるでしょう。キーパーはクトゥルフ神話(主にシュブ=ニグラス関連)、ヴィクトリア朝イギリスの風俗、ドルイド、ダーナ神話などに関する最低限の知識を持っているべきです。
■ 概要
イギリスの田舎貴族オークリィ家は、自覚はないながら、実はシュブ=ニグラスの血を遠く引いた一族です。この一族を根絶やしにすべく、家族全員が集うクリスマスを狙って、武装した探索者たちがオークリィ家を襲います。しかしその戦いによる死者たちはこの土地の持つ魔力によって復活し、死すら許されない闘争が繰り返されます。
ただし、このシナリオのPCは探索者ではなく、オークリィ一族の方なのです! 追い詰められ、狩られ、その闘いの中でPCは真の怪物に堕ちる前に事態を解決しなければならないのです。
舞台
第1章 シュブ=ニグラスの子
この章ではシナリオの主役であるオークリィの一族について説明します。PCはオークリィ家の中から選ばれなければなりません。
■ シナリオの背景:オークリィ家
ケルト――かつてヨーロッパの大半を支配し、ローマによって辺境に追いやられた民族。黄金と鉄器の文化を持ち、死を恐れず戦い、敵の首を狩った、謎と神秘の民。彼らはダーナ神話の神々と転生を信じ、またドルイドと呼ばれる賢者に導かれていました。
ダーナ神話に語られる数多くの神々の中に大母神ダヌー(あるいはアヌ)がいますが、これは外なる神シュブ=ニグラスのことに他なりません。ケルトの民はシュブ=ニグラスを信仰し、加護を得ていたのです。ドルイドとはシュブ=ニグラスに仕える神官たちのことであり、だからこそ今もなお伝説に語られるほどの魔力や権力を持っていたのです。そして古の時代、より多くの加護を求めるドルイドの声に応えてシュブ=ニグラスが与えた最大のものは、仔山羊や呪文などではなく、「シュブ=ニグラスの子」と呼ばれる存在でした。すなわちシュブ=ニグラスと人が交わり、人をはるかに超えた血族を生み出したのです。
シュブ=ニグラスの子の一族は体力・知性・魔力などのあらゆる点において人間をはるかに凌駕し、ドルイドの頂点に立ってケルトの民を率いました。たとえばダーナ神話で最も有名な英雄クー・フリンとは、まさにシュブ=ニグラスの子の行いの数々を人格化したものだったのです。しかし時の流れと共にシュブ=ニグラスの血は薄れ、信仰は形を失い、伝説は風化していきました。カエサルの時代にはその力もほとんど失せ、そのためケルトがローマに抗することはできなかったのです。
そして時は流れ、19世紀イギリス。スコットランド南部地方の貴族であるオークリィ一族はシュブ=ニグラスの子の末裔なのですが、もはやその血はほとんど常人と変わらないレベルまで薄れ、一族の者もほとんど自らの力に気づいてはいません。しかし現在においてさえオークリィ家はいくつかの点でシュブ=ニグラスの力を垣間見せています。
ひとつは、今は死の床にある前当主エゼキエル・オークリィ。血が薄れてきているとはいえ、オークリィ家には先祖返りのようにして強力な魔術師がたまに生まれます。エゼキエルもその一人であり、彼は数々の魔術を研究・実践してきた魔術師だったのです。彼は自分の子たちに魔術を伝えず死のうとしていますが、館の近くには秘密の魔術実験室が残されたままになっています。
もうひとつは、館の周囲を囲む土地と森に与えられた「蘇生の魔力」。イングランドに渡ってきた古のシュブ=ニグラスの子たちは、この地を拠点とすべく長い年月をかけて森を聖別し魔力機構を与えました。すなわち「この森の中ではシュブ=ニグラスの子は決して死せず」。エゼキエルすら言い伝えでしか知らないことなのですが、この魔力は今もなお機能しているのです。
■ キャラクター:オークリィ家
シナリオに登場するオークリィの血族は8人、うちPCとして選択できるのは6人です。なお、以降このシナリオの中で「シュブ=ニグラスの子」と言った場合、それはオークリィ一族のキャラクター8人のことを指します(家系図を参照する)。以下のハンドアウト「オークリィ家」においてオークリィ家に関する一般的な知識が解説されており、これはプレイ開始時にプレイヤーに配布されるものです。言うまでもなく、ゲーム開始時のPCたちはこれ以上の知識を持っていません。
なおオークリィ家には、全員が銀色の髪を持つという明白な遺伝的特徴があります。これはシュブ=ニグラスの血が人間の遺伝形質よりも優勢であることを示しています。またオークリィ一族は普通の人間よりもいくらか知性に優れ、あまり病気に罹らず、長命であるという特徴も持っています。
◇プレイヤー資料「オークリィ家」
オークリィは古くからスコットランド南部に住む一族であり、そのルーツはアイルランドにさかのぼる。イングランド移住は8世紀頃と伝えられ、今でもスコットランド有数の旧家であり名家でもある。またオークリィは多才で知られる一族でもあり、芸術、宗教、軍など様々な方面で多くの偉業を残している。
オークリィ家はかなりの大きさの森に囲まれている。「オークリィの森」と呼ばれるこの森は、一族の者あるいは付近に住む農民たちからも畏敬の念を持って見られており、非常に大切にされている。実際この森では、現在においてさえ、妖精や怪物を見たと言う話が絶えない。このこともあってか、真偽は定かではないながらもオークリィ家はドルイドの血を引く一族と言われている。
オークリィ家の先代当主はエゼキエル・オークリィという老人だが、70歳の彼は老衰と病によって余命幾ばくもない状態にある。エゼキエルには5人の子供がおり、長男以外は家を出て職に就いているが、クリスマス休暇には家族全員が戻ってくる。
1892年、冬。今年もまた、一家が集う平和なクリスマスが始まろうとしている。
ホレイショ・オークリィ Horatio Oakley
STR 11 CON 13 SIZ 15 INT 16
POW 12 DEX 10 APP 12 EDU 21
SAN 99 耐久力 14
ダメージ・ボーナス:+1D4
技能:芸術(リラ演奏) 45%、経理 70%、乗馬 40%、
信用 70%、説得 70%、図書館 60%、値切り 40%、
ギリシャ語 35%、ラテン語 30%、歴史 70%41歳。オークリィ家長男にして当主。男爵。PCとして選択可能。
父エゼキエルが病がちだったため、数年前からホレイショが当主として領地経営の采配を振るっています。その経営能力は確かなものであり、さらに公正さ、知識、人望を兼ね備えた理想的な領主です。現在は男爵ですが、父が死ねば伯爵位を受け継ぐことになります。二児の父親です。妻アンは長女ノエルを産んだときに産褥で死亡していますが、再婚話は一切断っています。
イーノス・オークリィ Enos Oakley
STR 10 CON 12 SIZ 15 INT 18
POW 11 DEX 9 APP 13 EDU 22
SAN 99 耐久力 14
ダメージ・ボーナス:+1D4
技能:医学 85%、応急手当 70%、説得 55%、
心理学 70%、精神分析 60%、図書館 70%、
ドイツ語 55%、ラテン語 55%38歳。オークリィ家次男。オクスフォード大学聖パトリックカレッジ講師。PCとして選択可能。
若くしてで医学と理学の博士号を得た、優秀な研究者。専攻は脳神経系の生理学です。研究者としては天才と呼ばれるにふさわしいエリートなのですが、私生活はいささかだらしなく、賭け事や女性関係のトラブルをしばしば引き起こしています。まだ結婚していません。
ネイサン・オークリィ Nathan(Nat) Oakley
STR 15 CON 14 SIZ 16 INT 16
POW 12 DEX 11 APP 12 EDU 17
SAN 99 耐久力 15
ダメージ・ボーナス:+1D4
武器:.45リボルバー 50% 1D10+2
.22ライフル 60% 1D6+2
技能:応急手当 55%、隠れる 70%、聞き耳 70%、
経理 40%、忍び歩き 65%、乗馬 40%、
信用 35%、投げる 50%、目星 65%26歳。オークリィ家三男。ノーザンフューワージ連隊所属軍旗曹長。PCとして選択可能。
オクスフォードを出てすぐに陸軍に入隊しました。スコットランド連隊の士官候補生です。外見はいかつい感じですが性格は意外と理知的かつ慎重で、荒事よりも情報収集に長けています。家族からはナットと呼ばれています。
アシュレイ・オークリィ Ashley Oakley
STR 12 CON 12 SIZ 15 INT 17
POW 12 DEX 12 APP 14 EDU 17
SAN 99 耐久力 14
ダメージ・ボーナス:+1D4
技能:信用 50%、説得 90%、図書館 70%、
法律 50%、母国語 90%、フランス語 50%、
ドイツ語 45%、ラテン語 30%、歴史 50%25歳。オークリィ家四男。イギリス外務省勤務。PCとして選択可能。
いささか神経質な秀才肌で、オクスフォードを主席で卒業(現代史学)しています。弁舌に長け、外務省では将来を嘱望されています。性格的には兄ネイサンに輪をかけたような慎重派ですが、知性が先走って皮肉や毒舌を吐くことがままあります。
マーガレット・オークリィ Margaret(Maisie) Oakley
STR 10 CON 11 SIZ 12 INT 18
POW 13 DEX 15 APP 16 EDU 13
SAN 99 耐久力 12
ダメージ・ボーナス:なし
技能:応急手当 75%、聞き耳 70%、芸術(ピアノ演奏) 85%、
心理学 60%、目星 65%19歳。オークリィ家長女。ディレッタント。PCとして選択可能。
幼い頃から音楽の才能を見せ、現在はアマチュア・ピアニストとしてロンドンで活躍中。音楽を離れれば気の優しいごくふつうの女性です。姪のノエルにとっては姉でもあり母親でもあるような存在です。家族からはメイジーと呼ばれています。
ヘンリ・オークリィ Henry Oakley
STR 14 CON 13 SIZ 15 INT 17
POW 13 DEX 11 APP 11 EDU 13
SAN 99 耐久力 14
ダメージ・ボーナス:+1D4
技能:写真 30%、追跡 40%、登はん 55%、
図書館 60%、博物学 75%、目星 65%19歳。ホレイショ・オークリィの息子。オクスフォード在学中。PCとして選択可能。
大学では成績優秀で、植物学を専攻していますが、行動派の教授に師事しているために野外活動が得意です。まず行動ありきがモットーで、確かに行動力にあふれている点は長所なのですが、時としていささか短絡的な行動をとることもあります。
ノエル・オークリィ Noelle Oakley
STR 9 CON 10 SIZ 10 INT 17
POW 10 DEX 14 APP 15 EDU 8
SAN 99 耐久力 10
ダメージ・ボーナス:なし
技能:芸術(ピアノ演奏) 70%、芸術(歌唱) 20%、
図書館 45%、母国語 60%、歴史 50%14歳。ホレイショ・オークリィの娘。PCとしての選択は不可能。
オークリィ館で生活しています。明るく快活な少女で、家の中よりは外で遊ぶ方が好きですが、しつけはゆきとどいいています(家庭教師のミス・ローラの影響が大です)。メイジーの影響で習い始めたピアノの腕前はすでにプロ級です。なお彼女の誕生日は12月25日です。
ノエルがPCとして不適格なのは、展開上死ぬべきキャラが一人は必要であるためと、さらに若年ゆえ技能値が制限されるためです。それを承知の上ならばキーパーはノエルをPC選択可能キャラクターとすることもできます。
エゼキエル・オークリィ Ezekiel Oakley
STR 21 CON 15 SIZ 13 INT 19
POW 20 DEX 21 APP 7 EDU 25
SAN 69 耐久力 14 正気度ポイント 36
ダメージ・ボーナス:+1D6
武器:.32リボルバー 45% 1D8
技能:医学 50%、応急手当 80%、オカルト 95%、
隠れる 65%、クトゥルフ神話 30%、心理学 85%、
目星 60%、フランス語80%、ラテン語 75%
呪文:黒い仔山羊の召還/従属、星の精の召還/従属、
シュブ=ニグラスの招来、記憶を曇らせる、心臓破裂、
トートの詠唱、門の創造、猟犬に命令する、
肉体の保護、破壊、ヨグ=ソトースのこぶし、
その他キーパーが適切と思った呪文70歳。オークリィ家先代当主にして魔術師。PCとしての選択は不可能。
エゼキエルは魔術師ですが邪悪ではありません。彼は若い頃に能力に目覚めた結果、自分は普通の人間ではないことを自覚したのです。しかし彼はむしろ真摯な学者であり、その生涯において人を殺したことは二度しかありません。一度は、病に罹って死に瀕していた妻アネットを儀式のいけにえにしたこと、もう一度は、オークリィ家の秘密に迫ってきた学者を始末したことです。エゼキエルは一見すると冷淡で非情な人物でしたが、彼なりに妻や子を愛していました。現に、生まれてきた我が子らに魔術的才能がないことを見抜いた彼は、祖先と自分の蓄えてきた知識を伝えぬまま死のうとしています。
現在のエゼキエルは自然な老衰と肺炎の結果として危篤状態にあります(古のシュブ=ニグラスの子はもっと長命だったのですが、エゼキエルにその形質は表れなかったようです)。しかしプレイ中に蘇生エネルギーによって一時的に回復した彼は、事態を察知し、我が子らを守るために己の魔術を駆使して探索者たちを殺害にかかります。彼の行動パターンの実際は第11章『エゼキエルの行動』を参照してください。
エゼキエルの能力値は蘇生エネルギーによって往年の体力を取り戻した状態のものです。寝たきり状態の彼を表すためにはSTR、CON、DEXを3分の1にしてください。
第2章 探索者
この章ではPCの敵となる探索者パーティについて解説します。このシナリオの中で「探索者」と言った場合、それはPCではなくこの探索者パーティのことを指します。シナリオ後半での探索者の行動指針は第10章『探索者の行動』で述べられます。
■ シナリオの背景:探索者
その知恵と力をもってクトゥルフ神話の眷属を滅ぼし、人間世界の平穏を守らんと戦う者たち、それがすなわち探索者です。ここ19世紀末のイギリスにも探索者は存在します。彼らは独自の調査によってオークリィの血に流れる秘密を突き止め、こう結論を出しました――「奴等は邪神の血を引く黒魔導師の一族であり、滅ぼさねばならない」。このシナリオに登場するのは5人の探索者です。彼らは有能かつ老練な探索者パーティであり、今までに数多くの怪物を滅ぼしてきました。強固な信頼に結ばれ、強力な武器を所持し、戦うための信念を胸に抱く彼らは、PCたちにとって真に手ごわい敵となるでしょう。
彼らは別の事件の探索の最中に、古い文献によってシュブ=ニグラスの子の存在について知りました。伝説上の存在だろうと思いながらも念のため調査してみると、シュブ=ニグラスの子の血統が今もなお実在することが判明したのです。彼らはオークリィ家の者には直接接近しないようにしつつ探索を行い、オークリィが強力な魔術師の家系であり過去より様々な魔術を実践してきたこと、少なからぬ数の人間をいけにえとして犠牲にしてきたことを突き止めました。決定的だったのは一族の納骨堂から古い死体を発見したことで、その死体の頭蓋骨や肋骨には無残に切り開かれた痕が残されていました。探索者たちは、この死体は16年前に行方不明になったとされるアネット・オークリィ(エゼキエルの2度目の妻)であり、アネットはエゼキエルの魔術実験の材料あるいはいけにえ)として殺され脳や心臓を摘出されたのだ、と考えました。つまりそれは、今もなおオークリィは非道な魔術師の一族であるという証明です。
探索者の下した結論は一族の抹消でした。そのためには家族全員が集まるクリスマス休暇こそが最高の機会です。決行はクリスマスイヴの午後と定められました――勝負は数日のうちにつくでしょう。戦いが始まるのです。
スティンソン・フィッツパトリック Stinson Fitzpatrick
STR 12 CON 12 SIZ 14 INT 16
POW 17 DEX 16 APP 13 EDU 19
SAN 80 耐久力 13 正気度ポイント 75
ダメージ・ボーナス:+1D4
武器:.38リボルバー 80% 1D10
仕込み杖 20%/受け60% 1D6+db
技能:言いくるめ 75%、応急手当 60%、オカルト 45%、
回避 62%、クトゥルフ神話 19%、信用 40%、
心理学 65%、説得 75%、図書館 65%、
ラテン語 45%、神学 45%
呪文:黄金の蜂蜜酒の製法、ビヤーキーの召還/従属、
門の創造、肉体の保護
持ち物:ホイッスル(ビヤーキー召還ボーナス+30%)、
黄金の蜂蜜酒(7回分)「分かっている、君たちは別に悪というわけではない。いや、それを言うならこの宇宙に絶対的な善悪なるものは存在しない。しかし君たちは『害』なのだ。我々人間にとっての害、人間社会を脅かす毒なのだ。だから私は君たちを……殺す」
28歳。英国国教会牧師補。探索者のリーダー。
探索者パーティの行動を決定するリーダーであり、交渉、調査、戦闘などのいかなる面においても優れた能力を持ちます。本質的には優しい人物なのですが、任務のためならばどんな非情なことでも行える、訓練された戦士です。常に計画性と合理性を重んじ、慎重さと大胆さとを兼ね備えた完璧な指揮官です。
フィッツパトリックはよく聖書の言葉を引用しますが、実はほとんど神を信じてはいません(少なくとも、祈りで現実が変えられるという幻想は完全に捨てています)。それどころか善悪・正邪といった考えも持っていません。彼は自らの手で執行人を務める決意をしたときに借り物の思想に頼ることをやめたのです。人間にとっての「害」の排除――それだけが行動原理です。彼は自分の行いの意味と価値をよく心得ていますから、彼を感情的に説得して戦いを止めさせることは不可能です。しかし理屈の通用しない狂信者でもありませんので、合理的な説得によって彼を納得させることは十分可能です。
ほとんどの場合ラヴィニアと共に行動しています。法衣の中に3丁のリボルバーを隠し持ち、1丁を撃ち尽くすと即座に次を抜いて攻撃します。ビヤーキーを移動あるいは攻撃の手段としてよく使用します。
ラヴィニア・アーネッソン Lavinia Arneson
STR 7 CON 11 SIZ 10 INT 17
POW 18 DEX 14 APP 15 EDU 14
SAN 79 耐久力 11 正気度ポイント 72
ダメージ・ボーナス:なし
武器:.22リボルバー 70% 1D6
技能:オカルト 70%、回避 78%、隠れる 45%、
説得 65%、クトゥルフ神話 20%、錠前 15%、
信用 65%、心理学 60%、目星 50%、薬学 70%
呪文:食屍鬼との接触、クトゥルフのわしづかみ、
被害をそらす、炎の精の召還/従属、ラーの声、
レレイの霧の創造「わたしたちはあまりにも多くのものを見、あまりにも多くのことを行ってきました。わたしたちがこの生において真の安楽を得ることは、もうないでしょう。でも、そんなわたしたちが何も知らない人々の幸せを守ることができるなら、それで十分なのです」
20歳。ディレッタント(占い師)。交渉・魔術担当。
ラヴィニアはウェールズの田舎貴族の娘です。5年前、自宅の屋根裏で魔術の本を見つけた彼女は、遊び半分で兄や妹と一緒にその本の魔術儀式を行ってしまいました――不幸なことにラヴィニアには魔術の才能があり、その結果召還された星の精によって兄と妹はむごたらしい死を遂げました。錯乱状態になった彼女は修道院に放り込まれましたが、そこでフィッツパトリックに出会って救われ、そして自らの能力を彼のために使うことを決めたのです。
ラヴィニアはフィッツパトリックを愛していますし、フィッツパトリックもそれに気づいていますが、ふたりがその感情をあらわにすることはありません。ラヴィニアはフィッツパトリックが戦う意見にほぼ全面的に賛同しており、また彼だけに手を汚させまいと、身につけた魔術を躊躇なく行使して敵を殺害します。彼女は自分たちが穢れた殺人者である(たとえ相手が狂信者や異人種であろうとも)と自覚しており、そのためかえってどのような非情な行為でも行うことができます。普段は修道女のような服装をしてフィッツパトリックのうしろにつき、戦闘時には呪文で彼を支援します。
イザドア・グラハム Isadore Graham
STR 8 CON 9 SIZ 13 INT 16
POW 14 DEX 10 APP 10 EDU 25
SAN 76 耐久力 12 正気度ポイント 65
ダメージ・ボーナス:なし
武器:.32リボルバー 45% 1D8
技能:応急手当 80%、オカルト 75%、回避 60%、
クトゥルフ神話 23%、考古学 70%、説得 75%、
図書館 85%、博物学 65%、目星 75%、
ラテン語60%、ドイツ語 50%、歴史 80%
呪文:夜のゴーントの召還/従属、ノーデンスとの接触、
再度の屈辱、門の発見
持ち物:イブン=グハジの粉(薄手の小袋入り。4回分)
《旧き印》が刻まれた石「何より尊くそして取り返しのつかないもの、それは命だ。力だの名誉だの知識だのといったものは命の輝きの前には霞んでしまう。なればこそわしらはどんな犠牲を払ってでも人の命を守らなければならぬのだよ。そう、どんな犠牲を払っても、な……」
57歳。司書。交渉・文献調査・治療担当。パーティーの副リーダー。
シオン大学図書館司書。10数年前には別の探索者パーティーに所属して活動していました。そのパーティーは悪を打ち倒すという使命に燃えていましたが、当時のグラハムは冷血な男であり、内心では己の知識欲と研究を第一に考えていました。彼らはいくつもの事件を解決していきましたが、その活動はシュブ=ニグラス信者の召還した黒い仔山羊によって終止符を打たれます。ただひとり生き延びたグラハムは後悔にさいなまれる10年を生きてきましたが、そこをフィッツパトリックに見出され、長い説得の末にもう一度探索者となる決意をしたのです。
グラハムはその苦い経験から、何事に対しても非常に慎重を期します。彼の最優先課題は敵の殲滅ではなく仲間の命の保護であり、またそれはこの探索者パーティーの行動原理にもなっています。しかし彼はフィッツパトリックの有能さを誰よりも理解しているので、フィッツパトリックの決めた行動方針には無条件で従います。ただしグラハム自身は参謀役として裏方で働くことが多く、直接戦闘は彼の得手ではありません。また彼は拷問や殺人などの行為を嫌っており、呪文も使いたがりません。
バートラム・シャンク Bartram Shank
STR 17 CON 14 SIZ 18 INT 12
POW 12 DEX 12 APP 10 EDU 14
SAN 89 耐久力 16 正気度ポイント 60
ダメージ・ボーナス:+1D6
武器:12ゲージショットガン 70% 4D6
キック 50%/受け70% 1D6+db
技能:言いくるめ 60%、クトゥルフ神話 10%、
写真 65%、心理学 50%、雄弁 65%、
目星 80%、母国語(英語) 85%「おれは憎いんだよ、人間でない連中が。同じ人間ならいつかはわかりあえる。だが、奴らは違う。決定的に違うんだ。人とそうでないものは同じ場所にいられない。これは闘いなんだ。奴らか、おれたちか」
33歳。ジャーナリスト。交渉・戦闘担当。
彼はウェールズの田舎町に生まれ育ち、その町で小さな新聞社に就職し、結婚し、平凡で幸福な生活を営んでいました――妻が大変容を起こして深きものに変わったその日までは。長く孤独な探索と戦いの末、シャンクは結果的にその手で妻を殺害し、彼自身もまた深きものたちに殺されそうだったところをフィッツパトリックとグラハムに救われたのです。
現在の彼はロンドンの新聞社デイリー・クロニクルの非常勤記者です。その人脈や取材能力を生かして探索者仲間のために情報収集を行うのが主な役目ですが、彼の巨体と怪力は戦闘においても頼りにされています。普段のシャンクは明るく気さくな人柄ですが、その心の中には非人間異種族に対する怒りと憎しみが渦巻いています。探索者パーティの中では最も直情的で単純な正義漢です(つまり、最も独善的で暴力的だとも言えます)。探索時には基本的にグラハムと行動を共にし、グラハムの身を守ることを最優先に動きます。
トッド Tod
STR 14 CON 12 SIZ 14 INT 12
POW 13 DEX 17 APP 8 EDU 11
SAN 91 耐久力 13 正気度ポイント 70
ダメージ・ボーナス:+1D4
武器:.38リボルバー 40% 1D10
小型の棍棒 50%/受け70% 1D6+db
ガロット 75% 窒息
技能:隠れる 70%、クトゥルフ神話、8%、
忍び歩き 80%、錠前 80%「別に正義のためってわけでもねえし、罪おろぼしってことでもねえ。誰もやらねえから仕方なくほれがやるんだ。それだけだ」
26歳。元・下町の犯罪者。不法行為・戦闘担当。
3年前までのトッドは、ロンドンの犯罪者の中でもちょっとした顔役でした。いつしか彼は謎の男からの依頼をたびたび受けるようになり、美術品を盗んだり女を連れて行ったりする仕事をするようになりました。しかし妙な依頼ばかり受けるうちに疑問を感じ、ある時依頼人を探ってみたのです。男はヨグ=ソトースに仕える魔術師でした。トッドが売春か何かだと思って連れて行った女たちは生贄として全員殺されていたのです。トッドは己の行為の結果に怯え、逃げ出し――そしてフィッツパトリックとグラハムに出会って、自らの行為を清算する道を選んだのです。
現在の彼は、表向きはグラハムの下男として暮らしています。探索者としてのトッドは汚れ仕事を一手に担い、家宅侵入、泥棒、あるいは拷問なども行います。また、敵が非人間種族あるいは邪教徒と分かれば容赦なく殺害します。顔に傷があり、また強いコックニー訛りもあるので上流階級を舞台にした探索には不向きですが、裏社会での交渉や浮浪者のふりをした探索においては彼の右に出るものはいません。なお元々浮浪児だった彼は自らの姓を知らず、仲間たちからは常にトッドとだけ呼ばれています。
このシナリオの中核をなすふたつの障害のうちひとつが探索者たちです(もうひとつは蘇生メカニズムを解き明かすことです)。PCたちには、この探索者をどう撃退し、あるいはどう交渉するのかが問われることになります。キーパーは可能な限りの思慮を払って探索者を行動させてください。彼らは決して単純でも無能でもありません。探索者たちを独善的な狂信者として扱わないでください。探索者を説得することは非常に困難ですが不可能でありません。そしてキーパーはPCたちをその「非常に困難」なことに挑戦させなければならないのです。
探索者たちは基本的にフィッツパトリック&ラヴィニア組とグラハム&シャンク&トッド組に分かれて行動します。これは5人もの人間が同時に動いて目立つのを避けるためですが、シャンクとトッドが魔術の使い手(ラヴィニア)を好んでいないためでもあります。またトッドは単独行動が多く、人前にはあまり姿を現しません。パーティーの誰もがフィッツパトリックをリーダーとして認めており、意見対立による内部分裂などは起こしません。
探索者の中にはPOW×5を越える正気度ポイントを持っている者がいますが、それは過去の探索を成功させたことによる報酬の結果です。
第3章 地理その他
■ オークリィ館(マップを参照する)
一族が住む館はオークリィ館と呼ばれ、9世紀頃に築かれたままの基礎を残す、非常に古い建物です。地理的にはスコットランドの南部高地、ダンフリーズとホーイックの中間あたりに位置します。オークリィ館は実際には館と言うよりも古城と形容すべき建物で、長方形の館の外壁は堅牢きわまる巨岩で組まれており、窓も少なく、ほとんど要塞さながらの威容です。しかも使用されている石材はスコットランド産ではなくアイルランドのものであり、過去の学者たちを悩ませてきました(実はドルイドたちが魔術で運んだのです)。
館内部のドアはそれぞれSTR23、窓は鎧戸を下ろせばSTR18、正面扉はSTR32です。外部に面した扉は正面扉だけであり、窓もかなり少ないため(1階ではサロン、大応接室、食堂のみ)非常に防衛に適した館です。館内の調度品はどれも古く立派ですが、特に秘密や魔術的要素を持ってはいません。よって以下では特記事項のある部屋のみを解説します。
館には斧や油はありますが、銃器は古い鳥撃ちライフル(ダメージ1D6、射程25m)が3丁あるだけです。PCが銃に個人的興味の技能を振り分けているならばどんな銃を持っていてもかまいません(最初から持っているのはネイサンだけです)。
なおこの館に猟銃(ショットガンやライフル)がほとんどないのは不自然なことではありません。日本語で言うところの「狩り」は英語のHuntingとShootingにあたりますが、イギリス貴族の趣味であるHuntingはあくまでも馬と猟犬で獲物を追うスポーツのことであって、銃はまったく使わないのです。
◇広間
2階まで吹き抜けになっている大きな広間です。玄関ホール側の壁にはオークリィの森の鳥瞰を描いた絵が掛けられています。この絵の詳細は第9章を参照してください。
◇書斎
本はあまり置かれておらず、静かにくつろぐ場所ことを目的とした部屋です。壁にはオークリィの歴代当主、あるいは何か目立つ業績を成した一族の者の肖像画がかけられています。この絵をしっかり見たPCには〈アイデア〉−20%ロールを行わせてください。成功ならば、描かれたすべての者が銀髪であること、そして、大半の者が長寿であった(平均80歳)ことにも気づきます。また書斎にはオークリィの家系図がありますが、そこから得られる手がかりは第9章を参照してください。
◇図書室
歴史書や哲学書などの素晴らしいコレクションが並べられていますが、魔道書などはありません。どの本にも読まれたあとがあり、歴代オークリィ一族の知性と教養の高さが伺えます。蔵書を利用してケルト民族、ドルイド、ダーナ神族などに関する一般的な知識を得ることもできます(その概要は第9章を参照してください)。この図書館の『ガリア戦記』(ラテン語。全8巻。ユリウス・カエサルの自伝的戦史で、ローマがヨーロッパのケルト民族を駆逐した様が記されている)の中には【ウェインガートナー教授の草稿】の前半部分が計2枚挟まれています。発見するためにはそれぞれ〈図書館〉ロールが必要ですが、プレイヤーが『ガリア戦記』を探して読むと明言した場合、草稿の「前半の一」はロールなしで入手できます。『ガリア戦記』の別の巻にもう1枚である「前半のニ」が挟まれていますが、こちらは「前半の一」発見後にさらに〈図書館〉ロールが必要です。草稿の内容は第9章を参照してください。
◇エゼキエル寝室
机の引出しに38口径リボルバーが1丁入っていますが、これはエゼキエルが持っていってしまうので、PCは使用できません。
◇地下の道具置き場
斧、ナタ、ノコギリ、工具、油などが置いてあります。木を切るのに必要な道具は十分あります。
■ 館周辺の地理(マップを参照する)
◇オークリィの森
植生は林と森の中間程度のもので樫の木が中心です。館からは真南に道がついており、馬車が通れます。それほど深い森ではありませんがそれ以外に外へ続く道はなく、道のない場所を歩くなら2マイルあたり1時間かかります。森にはキツネ、アナグマ、ウサギなどが生息しています。森自体には何も異常な点はありませんが、ただ、この緯度で樫の木がこれほど密集して森を作っているということが珍しいとは言えます。森の持つ魔力機構は第4章で解説されます。
森の中を歩いて〈博物学〉と〈目星〉のコンビネーション・ロールに成功すると、切り株になっている木々の年輪が北を指していないことに気がつきます。広く調べてまわれば分かりますが、この森の木の年輪はすべてグランドファーザー(後述)の方向に寄っています。
◇厩舎
馬車馬2頭、乗用馬4頭、そして猟犬14匹がいます。
◇門番塔
石造りの小さな塔で、門番夫婦が住んでいます。
◇グランドファーザー
館から歩いて35分ほどの場所にある、この森で最古の樫の木です。誰がつけた名かは知られていませんが、この一帯では「オークリィの森のグランドファーザー」として有名です。高さ90フィート(約27メートル)、非常に太く巨大な樫であり、樹齢は1000年を越えるといわれています。近くにはグランドファーザーほどではないもののやはり古く高い樫がもう一本立っています。
グランドファーザーを切り倒すには館の道具を使って15時間人が必要です。作業には5人まで協力することができます(つまり最短で3時間)。
◇納骨堂
先祖代々の遺体が収められている納骨堂。地上一階地下一階の堅牢な石造りで、正面の鉄扉には頑丈な鎖と錠が掛けられています(鍵は当主が持っています)。一族が死亡したとき以外は開けない場所で(前回開けたのはホレイショの妻アンが死んだとき)、普段は誰も訪れないため、森には納骨堂に続く道さえついていません。建物内部の壁には一面に棚が設けられており、棺がずらっと安置されています。納骨堂の詳細に関しては第9章を参照してください。
◇岩の祭壇
厩舎から北北西(マップではまっすぐ上)にちょうど1マイル行ったところに小さな空き地があり、10フィート×10フィート程度の大きな岩板が寝かされています。しかし岩の置かれた空き地は木々が巧妙に重なり合って隠しており、偶然で見つけることはまず不可能です。PCたちは誰一人としてここの存在を知りません。
この岩はシュブ=ニグラス《招来》のための祭壇であり、オークリィの先祖たちはここで無数の生贄を捧げてきました。よってすでに血で清められており、いつでも《招来》に使えます。PCには知るよしもないことですが、シュブ=ニグラスの子たちは、シュブ=ニグラスの《招来》に際して黒い仔山羊と同じボーナス(その場にいるだけで成功率が一人につき10%上昇)を得ます。
◇沼
ただの沼ですが、非常に深く、底なし沼と言われています。この期間は上で滑れるほど凍っています。館から沼へは一応道がつけられており、歩いて25分で行くことができます(馬は通れません)。
◇教会
古く小さな英国国教会派の教会。老牧師ヨランダ・カデンとその妻モリィが住んでいます。風向きにもよりますが、森の中にいてもこの教会の鳴らす鐘の音によって時刻を知ることができます。実はこの牧師夫婦はすでに探索者の協力者となっており、探索者たちに情報や休憩場所を提供しています。PCがうかつに牧師夫婦を信頼すると、命を落とすことになります――夫婦はラヴィニアから受け取った毒薬(ストリキニーネ、POT20)を持っています。
■ NPC:オークリィの使用人その他
◇ハロルド・ハンブリン Harold Hamblin
DEX 7 INT 15 POW 12
正気度 60 耐久力 8
61歳。オークリィ家執事。
ハンブリン家は先祖代々オークリィに仕える家系であり、その忠実さを疑うものはありません。個人的にもエゼキエルやホレイショを尊敬しており、主人のためならばまさに命をも投げ出すでしょう。ダンフリーズに息子夫婦がいます。ハロルドはPCたちが生まれる前からこの屋敷に勤めており、そのためPCにとって非常に役に立つ情報源になります。例えばエゼキエルの人となり、エゼキエルの亡妻たち、過去の出来事、周辺地域などの知識を持っています。
◇ローラ・リー Laura Lee
DEX 13 INT 16 POW 14
正気度 70 耐久力 11
32歳。ノエルの家庭教師(ガヴァネス)。
以前はメイジーの家庭教師でもありました。生真面目かつ厳格な女性で、家族の誰に対しても常に厳しい姿勢を崩しません。内心ホレイショに好意を寄せているのですが、決してそれを態度に表すことはありません。
◇ラス・スキャモン Ruth Scammon
DEX 10 INT 13 POW 10
正気度 50 耐久力 13
37歳。エゼキエル付き看護婦。
丸々と太った小柄な女性で、いつも陽気でにこにこしています。親切でよく気のつく性格です。〈応急手当〉85%を持っています。
◇従僕・コック・牧童たち
DEX 10 INT 12 POW 11
正気度 55 耐久力 13
計11名。ロバート、ベーガー、ジェイムズ、ダニエル、他。4名の牧童は厩舎で、あとは館の地下で寝泊りしています。
◇女中たち
DEX 11 INT13 POW10
正気度50 耐久力11
計7名。ドーラ、アニー、リンダ、他。館の地下で寝泊りしています。
◇猟犬
STR 7 CON 11 SIZ 5
POW 10 DEX 12 耐久力 8
ダメージ・ボーナス:−1D4
武器:噛みつき 30% 1D6
技能:追跡 80%
計14匹のビーグル(ウサギ狩り用の小型犬)。家族にも慣れてはいますが、猟犬をきちんと命令に従わせることができるのは二人の猟犬係だけです。
第4章 蘇生の魔力
この章で述べられるのは、オークリィ館を取り囲む森の持つ魔力とその起動メカニズムについてです。これはシナリオのメインギミックであり、厳密な法則に従って運営されなければなりません。キーパーは注意深くこの章を読み、完全に理解してください。
1.起動メカニズムの基本
オークリィの森に立つ古木グランドファーザーを中心とした半径2マイルの球形範囲を「蘇生効果領域」とする。蘇生効果領域内でシュブ=ニグラスの子の生命反応が急激に低下・消滅した場合、グランドファーザーはそれを感知し、「シュブ=ニグラスの子が死んだ」と認定する。
シュブ=ニグラスの子の死を感知したグランドファーザーは、森に立つ全ての木々に向けて「我にエネルギーを集めよ」と霊的指令を送る。指令を受けた木々は大地のエネルギーを吸い上げてグランドファーザーに向けて照射する。グランドファーザーはそのエネルギーを集中し「蘇生エネルギー」に変換し拡散放射する。エネルギー放射開始の時間は、シュブ=ニグラスの子の死から2時間後である。
死亡していたシュブ=ニグラスの子はこの蘇生エネルギーを受けることにより1D10分後に死から復活する(負傷は治癒し、全耐久力回復)。
2.グランドファーザー
基本メカニズムで述べられたグランドファーザーの働きを「グランドファーザー機能」とする。枯れたり切り倒されたりしてグランドファーザーが無くなった場合、グランドファーザー機能は現在森に立つ木の中で最も古いものに(即座に)受け継がれる。その結果、蘇生効果領域も移動する。
いったん発動したグランドファーザー機能は10日間にわたって起動し続ける。その期間内にまたシュブ=ニグラスの子が死ねば、その時点から新たに10日のカウントが開始される。なお老衰・衰弱などによる死は上記の「生命反応が急激に低下・消滅」という条件を満たさないため、グランドファーザーは起動しない。また、蘇生作業中のグランドファーザーの幹に直接触れた者の耐久力は1D4ポイント回復する(負傷ひとつにつき1回有効)。この期間中のグランドファーザーには強力な霊力が集中しており、近づいてPOW×5ロールに成功した者はその霊力のたぎりを感じることができる。
なお、森でグランドファーザーの次に高い木は館の西方0.8マイルに立っている。その次に高い木は、最初のグランドファーザーの隣である。それ以降はキーパーが任意に場所を決めること。
3.蘇生効果の実際
蘇生した者は1D10分間で完全に負傷が癒えたように見えるが正確にはそうではなく、グランドファーザーが放射し続けるエネルギーによって生命が維持されているに過ぎない。そのため、蘇生効果領域から出れば蘇生したキャラクターのダメージは再び現れる。つまり、再び傷が開いて死ぬ。
これを表すために隠しパラメータ「真の耐久力」を用意する。まず、死亡したキャラクターはその時点で真の耐久力がゼロになる。真の耐久力は蘇生後24時間ごとに3ポイントずつ回復する。真の耐久力が本来の耐久力の最大値に達した時点で完全回復とみなし、キャラクターは森から出てもダメージを受けることはなくなる。しかし完全回復していないキャラクターが森から出ると、5ラウンドにつき1ポイントずつ耐久力を失う――その結果耐久力がゼロになればキャラクターは死ぬ(死体を蘇生効果領域に戻せばまた蘇生する)。なお真の耐久力はキーパーの管理化にあり、プレイヤーはその存在も現在値も知ることはできない。
4.副作用
一度蘇生エネルギーが放射され始めてしまうと、効果領域内のあらゆる生物にその効果が及ぶ。つまり、グランドファーザー機能の起動にはシュブ=ニグラスの子の死が必要だが、いったん起動してしまえば、蘇生エネルギー自体は無目標に拡散されるのである。すなわちオークリィの森の中ではいかなる生物も強制的に死から蘇生させられてしまうことになる。
蘇生エネルギーには肉体の回復力を高める効果もあり、通常ならば1週間で1D3ポイントの自然回復力は、1日(24時間)1D3ポイントになる。これによって、死に至らない負傷でも急速に回復することになる。また、蘇生エネルギーを受けているキャラクターは空腹、疲労、脱水状態などを感じない。病気や老衰のキャラクターの場合は、蘇生エネルギーを受けている間だけは健康と活力を取り戻すことができる。ただし身体機能障害やすでに治癒した古い傷が治ることはない。
5.蘇生する肉体
蘇生エネルギーの基本作用は、肉体に生命力を吹き込んで無限の回復能力を与えることである。蘇生対象が肉片になっていたりパーツを失っていたりする場合、事態は恐るべきものになる。
四散した肉片が蘇生エネルギーを受けると、全てのパーツは脳を中心に集まろうと動き出す。どうしても足りない部位は新しく再生されるが、記憶や思考は本来の脳にしか宿らない。例えば、頭と胴体を切り離して別々の部屋に閉じ込めるとする。そうすると各部品それぞれから再生が始まり、1D10分間後には2人のキャラクターができてしまう! 脳から再生したキャラクターは死の直前までの記憶を持っている全き人間であるが、胴その他のパーツから再生したキャラクターはクローンに過ぎず、記憶も意思も持たない。このクローンは重度の記憶喪失症であるかのように扱う。クローンは元のキャラクターと同じ能力値を持つが、正気度ポイントはゼロである。
喰われてしまって消化されつつあるような場合には蘇生できない。死亡後に常温で12時間以上放置された死体は腐敗のため蘇生できない。ほとんど消滅した死体(例えば大火力で焼き尽くされた場合)も蘇生できない。脳を完全にこなごなにされたような場合には、記憶や意思が一部欠落したり、あるいは回復するまでに時間がかかったりすることもありうる。これはキーパーが状況に応じて判断すること。
6.精神の恒常性維持
古のドルイドたちは死からの復活が精神に与える悪影響についても考慮し、蘇生エネルギーにもうひとつの効果を仕込んだ。すなわち「発狂を抑制する」効果である。ルール的に言うと、蘇生エネルギーを受けている者は一時的狂気あるいは不定の狂気になることは決してなく、狂気関係のルールを一切無視できるのである。さらにMP回復速度が通常時の4倍になる効果もある。
しかしシュブ=ニグラスの子の正気度ポイントがゼロになった場合、そのキャラクターはその場でシュブ=ニグラスの黒き仔山羊に変身する! 仔山羊は手近に敵がいれば襲いかかる。そうでなければ走って森に消える。
狂気に関する詳しいルールは第5章『狂気』において述べられる。
7.蘇生エネルギーの停止
すでに述べられたように、グランドファーザーを切り倒しただけでは蘇生エネルギーは消えない(単に別の木に移転する)。蘇生エネルギーを根源から無効化するためには森を消滅させるしかない――焼き払うことが最も効果的である。森がなくなればエネルギー放射は絶たれ、キャラクターは蘇生効果範囲から出た場合と同じ処理を受ける。
ドルイドの遺した魔力はグランドファーザーを中心に維持/管理されている。森全体を消滅させればグランドファーザー機能は移転先を失い、完全に魔力ごと消失する。二度と復活することはない。
第5章 狂気
第4章で触れたように、蘇生エネルギーには狂気を抑制する二次効果があります。狂気とはある意味で精神を守る安全弁であり、恐怖から一時的に目をそむける逃避手段でもあるのですが、このシナリオではそれを強制解除します。狂気に陥らず行動できるメリットがある以上に、短時間で際限なく正気度ポイントを失うデメリットがあるのです。
それを表すため、狂気関係のルールに以下のような追加と変更を行います。もちろんこれはプレイヤーにはまったく知らされません。プレイヤーは自らの観察と推理によってこの原理を突き止めねばならないのです。
1.SANチェックの基準
状況 正気度喪失 家族の死を目撃した 1/1D6+1 死から蘇生した 1D4/1D10+2 蘇生の瞬間を目撃した 2/1D6+2 死んだはずの者と会った 1/1D6+1 非人道的行為を犯した 1/1D4以上 その他キーパーは思いつく限りの状況で正気度チェックをさせてください。正気度チェックはNPCもPC同様に行ってください。
「死から蘇生した」ことによる正気度ポイントの喪失は、生き返ったという事実そのものよりも、死んだ瞬間の恐怖によるものの影響が大です。それが特に恐ろしく悲惨な死に方であった場合などには、キーパーの判断によって喪失正気度ポイントを増やしてください。
「非人道的行為」が正気度の減少に値するかどうかはキーパーが判断してください。死体の首を切断する、死体に油をかけて焼く、生き返りつつある死体を何度も何度も殺す、などは十分に非人道的な行為です。また、確信的・理性的に行われる殺人にも正気度チェックが適用されるべきです。ただし、探索者がシュブ=ニグラスの子を殺す行為には正気度チェックは必要ありません――すでに探索者は非人間種族を始末する行為に「慣れ」きっているからです。
2.狂気の抑制
蘇生エネルギーの影響下にあるキャラクターは、PC、NPCを問わず、決して一時的狂気および不定の狂気に陥りません。正気度ポイント喪失に伴うアイデアロールを行うこともありません。なおこの効果の副作用として、新たな恐怖への「慣れ」ルールもまったく適応されなくなります。
蘇生エネルギーの影響力は、精神を癒すのではなく恒常性(≒常態)を維持させるだけです。狂気に匹敵する事態を目撃したキャラクターはその瞬間だけ奇妙な無感動に襲われ、それによって精神を防衛します――例えば「どこか遠くの出来事のように感じる」「他人事のようにしか思えない」「こんなのはたいしたことじゃない。よくあることだ」などの感覚です。しかし見たものは確かに精神に蓄積され、正気度ポイント自体は確実に減っていくのです。
3.真の狂気
蘇生エネルギーの影響下にある通常の人間は、正気度ポイントがゼロにまで落ちるとそこで初めて発狂します。これは完全な永久的狂気であり、二度と治ることはありません。
シュブ=ニグラスの子の場合、正気度ポイントがゼロにまで落ちるとその場で「シュブ=ニグラスの黒い仔山羊」に変身します。体中の肉が盛り上がり、裂け、触手が生え、見る間に巨大な仔山羊へと変身するのです。変身は2ラウンドで完了します。これを目撃したキャラクターは1/1D8の正気度ポイントを失います――仔山羊自体を目撃したことによる正気度喪失1D3/1D10とは別にです。
変身を終えた仔山羊には人間だったときの記憶はほとんどありません。仔山羊は周囲に敵がいれば襲いかかります(基本的にSTR吸い上げは行いません。また呪文は使いません)。敵を殺し終えたら、あるいは敵が見当たらないようなら、仔山羊は走って森に消えます。それ以後仔山羊が積極的に姿を見せることはありませんが、キーパーは仔山羊が森のどこにいるかを考慮しつつシナリオを進行させてください。森の中を移動するキャラクターは運悪く仔山羊に遭遇するかもしれません。
4.マジックポイント黒い仔山羊(サンプル)
STR 41 CON 18 SIZ 50 INT 20
POW 18 DEX 19 耐久力 34
ダメージ・ボーナス:+5D6
武器:蝕肢 80% db+STRの吸い上げ
踏みつけ 40% 2D6+db
装甲:銃からは1ポイントのダメージしか受けない
(貫通時2ポイント。ショットガンはダメージ最小値を与える)
技能:忍び歩き 60%、森の中に隠れる 80%
正気度喪失:1D3/1D10
精神の恒常性を維持することの副作用として、蘇生エネルギーはマジックポイントの回復を早める効果を持ちます。本来のルールでは24時間で全MPが回復するところが、6時間に短縮されます。通常の4倍の速度でMPが回復するのです。
第一幕「咎有る者が裁きを受けるために」
このシナリオは大きくニ幕に分かれています。クリスマスイヴの日没までが導入部である第一幕「咎有る者が裁きを受けるために」、その後の数日間が本編たる第二幕「灰の中から蘇るその日は」です。ここで解説される第一幕は基本的に一本道構造であり、キーパーは以下に定められた内容を確実にこなすことだけが求められます。キーパーは各場面における効果的な演出を事前に考えておくとよいでしょう。ゲーム開始から第一幕終了まではおよそ2時間を想定しています。
■ セッション開始準備
キーパーはオークリィ家の家系図とキャラクターイラストをプレイヤーに公開し、この中からPCを選ばせてください。6人の選択可能キャラクターは職業別技能のみすでに配分されており、担当プレイヤーが個人的興味の技能値(INT×10%)を配分することによってPCとして完成します。選択可能キャラクターには踏み込んだ性格設定があえてなされていませんので、プレイヤーはある程度自由にPCの性格を決めることができるでしょう。
使用キャラクターが決定したら、ハンドアウト「オークリィ家」とマップを配布して各設定の説明を簡単に行ってください。納骨堂やグランドファーザーについても一言触れておいてください。
第6章 2日前
12月22日。数日前から雪が降っており、館も森もほぼ完全に白く染まってきています。
この日はNPCの顔見せや舞台設定の把握のために使います。キーパーはこの日をアドリブで進行してください。選択PCが誰であったかによっても異なりますが、まだ来ていなかった家族のうち最後の一人か二人がこの日に館に戻ってくるという状況が妥当でしょう。久しぶりの再会を喜ぶ暖かい家族の姿と、イギリス風クリスマス――七面鳥、プラム・プディング、聖歌、ツリー、雪だるま、etc.――を演出してください。以下のふたつのイベントは軽い伏線であり、22日あるいは23日中に発生させてください。
◆ピアノ
メイジーとノエルが見事にピアノ(オルガン)を弾くシーンをどこかで発生させてください。和やかな雰囲気を演出するとともに、蘇生時の演出の伏線になります。なお彼女たちはモーツァルトのピアノ協奏曲第20番第2楽章を好んで弾きます。
◆浮浪者の噂
召使いか執事が「最近、森の周辺を歩いている浮浪者の姿がしばしば目撃されているので、外出するときは注意なさってください」というような話をしてくれます。浮浪者の正体は森を調査中に目撃された探索者トッド・クオックです。
第7章 1日前
12月23日。この日の雪は小降りになっています(積雪量は5cm程度)。
前日と同様に平和な家族を演出する一日なのですが、重要なイベント「グレン教授の来訪」が発生します。ロンドン大学の歴史学教授がオークリィ家について調査するために訪れるのです(一週間ほど前に来訪予約あり)。ただし本格的な調査ではなく、付近を通る教授が挨拶がてら訪れる程度のものに過ぎません。しかし実はこのグレン教授なる人物は本物ではなく、正体は探索者のイザドア・グラハムなのです。探索者たちはオークリィ家殲滅計画の最終段階に入り、対決に向けての最後の下調べに来たのです――標的の顔を直接確かめ、そしてあわよくば敵の知識や能力を探るために。
午後2時ごろ、玄関に2人の男が到着します。男たちはロンドン大学のグレン教授とその助手マクファースンと名乗り(探索者のイザドア・グラハムとバートラム・シャンクです)、当主に面会を申し入れてきます。キーパーは予約があったこと、彼らはオークリィの歴史を訊きに来たのだということをプレイヤーに教えてください。キーパーは当主以外にもできるだけ多くのPCが会談に出席するように誘ってください。
挨拶の後、グラハム(グレン教授)はオークリィ家や館の歴史について一般的な質問をします。それが一段落ついた頃、グラハムは話題を微妙にドルイドやダーナ神話に関する方向にもっていきます。「ところで、オークリィ家とドルイドには何か関係があるのでしょうかな?」のようにです。実はここからが本当に訊きたい事なのです。キーパーは不自然と思われないように会話を進め、ドルイドやダーナ神話に関してグラハムに語らせてください。グラハムは以下のような話題に半ば自答しながら講義調に会話を進めていきます。このシーンでのキーパーの目的は、グラハムを通してプレイヤーにドルイドやダーナ神話についての基礎知識を与えることです(ですからすでにその手の知識を持つプレイヤーたちを相手にしている場合、このシーンはかなり短縮してかまいません)。ある程度語ったと思ったら、グラハムは「おっと、申しわけありません。つい講義をしてしまうのが大学教授の悪い癖でしてな」などと謝ります。そして最後に館の中を一通り見せてもらってから退去します。◇ドルイドについて。「樫の木の賢者」が語源? オークリィ(Oakley)の姓にも樫(Oak)の文字が入っているが、これはドルイドとの関係を暗示するのか? オークリィの森にも樫が多い。ドルイドは森の中の聖地でいけにえを捧げて儀式を行ったともいうが、オークリィの森にそのような痕跡はないか?
◇オークリィ一族の起源はアイルランドのアルスター地方らしいが、本当か?(それは事実です) アルスターといえば英雄クー・フリンの地である。これはドルイドとの関係を一層感じさせる。
◇クー・フリンについて簡単な説明。クー・フリンはダーナ神話最大の英雄であり、様々な偉業を成し遂げたが、最後は死の女神モリガンの怒りを買って呪いをかけられ戦死した。
キーパーはまだこの時点ではグラハムを重要人物と思わせるべきではありません(ですから顔イラストを見せないように)。むしろプレイヤーたちが「あのNPCはプレイヤーにダーナ神話を語るために出てきたチョイ役だ」と思う程度に演出してください。
第8章 1日目
12月24日、クリスマスイヴ。午後4時ごろまでは粉雪が舞う程度ですが、日没(午後5時過ぎ)から夜にかけて雪が激しくなります。
これ以降シナリオ展開が加速しますので、食事休憩などが必要ならば以下のイベントの発生前に取ることをお勧めします。
■ 襲撃1:ノエル
いよいよ事態が急転し、聖夜が血に染まります。まずは午後3時半ごろにノエルが外出したがるところから始まります。ノエルは凍った沼で滑れるのかどうかを見るため(そして雪で遊ぶため)外に行きたいと言い出します。キーパーは、ノエルだけでは危ないし遠いのだから誰か一緒にいなければならない、という理由をつけてPC1〜2人と召使い1人をノエルに同行させてください。できればここではプレイヤーを別室管理することをお勧めします。
森に入ってしばらくたった頃、藪をかきわけてくる牧師姿の若い男と修道女らしき服の若い女に出会います。男は「ああよかった。こんなところで人に出会えるなんて運がいい。実は、近道をしようとして入り口でないところから森に入ったら迷ってしまいまして。ええと、あなたたちはオークリィの方々でよろしいのですね?」と話しかけてきて、教会への寄付の件で礼を言うためにオークリィ館に行く途中だったと言います。もちろんこの二人は探索者スティンソン・フィッツパトリックとラヴィニア・アーネッソンであり、PCたちの後を追ってきたのです。PCとノエルが確かにオークリィの家族であることを確認すると、フィッツパトリックはにこやかな表情を崩さずに話を続けます。「そうですか、お会いできて光栄です。では、主が汝等の魂に安らぎをもたらさんことを――」そのまま、いきなり衣から38口径を引き抜いてノエルの胸に2発撃ちこみます。
この攻撃は完全な不意打ちですので、PCはこのラウンドには何もできません(回避や受けは可。もちろん銃弾は回避できませんが)。次のラウンドからは通常の戦闘が行われます。
このシーンでのキーパーの目的は、ノエルを完全に殺し、PCを負傷状態に追い込むことです。キーパーは召使いを上手く使ってPCを殺さないようにしてください。もしPCが銃を持っていた場合、第1ラウンドにラヴィニアが《クトゥルフのわしづかみ》を使ったほうがよいでしょう。探索者としては急いでとどめを刺す必要はありませんので、フィッツパトリックは召使いに向けて警告を発してから姿を消します。「これよりオークリィの一族はこの地上より姿を消す! 関わりなき者は日没前に館より去れ!」この時点でのフィッツパトリックの第一目的はこの警告にあります。敵の殲滅よりも無関係の人間の安全が優先なのです。そして、いったん戻って仲間と合流します。
■ 襲撃2:館
ノエルたちが森に入っていった後、館にグレン教授(グラハム)と助手(シャンク)がやってきます。二人は、急用があるのでオークリィ家の方に取り次いでいただきたい、と執事に告げます。彼らはそのままホールで待ち、オークリィ家の人間が来ると、それが誰であれ問答無用でシャンクが12ゲージショットガンを抜いて撃ちます。
二人は即座に玄関扉まで撤退し、グラハムが大音声を張り上げます。「これよりオークリィの一族はこの地上より姿を消す! 関わりなき者は日没前に館より去れ! 日没後もこの館にいるものは死を選択したとみなし、オークリィ家の者であろうとなかろうと容赦なく殺害する。繰り返す! 我々はこれよりオークリィ一族を抹殺する!」そして執事や召使いが向かってくるようなら威嚇射撃をしつつ、森の中に姿を消します。
グラハムの第一目的はやはり警告であり、オークリィ家の者を撃たせたのはついででしかありません。何より探索者としては銃撃戦こそが最も恐れるべきものであるのです。キーパーはここでもPCを殺さず負傷状態にとどめるよう努力してください。
■ キーパーの戦略:第一幕
ここまでの展開に最重要なのは、必ず一人はシュブ=ニグラスの子を殺すことです。そしてPCの行動を制限するために一人以上の家族に負傷を負わせることも必要です。かつ探索者の恐ろしさと強さを印象付けることも目的ですので、できれば探索者は負傷させないようにしてください。ダイス目、特にダメージ値をごまかすのはやむを得ないでしょうが恥じることはありません――ここまでは舞台設定を整えているに過ぎず、勝負はこれからなのですから(何よりも不意打ちで殺されてしまってはプレイヤーが不満を抱くでしょう)。ただし第ニ幕に入ってからは遠慮なくPCを殺してしまってかまいません。
ただし、もしこの時点で運悪くPCや探索者が死んだりしても、それはプレイに致命的な障害になるわけではありません。PCを失ったプレイヤーにはしばしの脱落気分を味あわせておいてください(間違っても、すぐに蘇ることをほのめかしてはなりません)。
■ 蘇生
これ以降はPCたちが自由に行動できるようになりますが、あとひとつ、死んだシュブ=ニグラスの子の蘇生という重要イベントが残っています。最初の蘇生は死から2時間+1D10分後に発生しますので、キーパーはこの2時間を利用して舞台の最終調整を行ってください。
まずオークリィの家族は館に集まって負傷者の手当てを行い、そして今後の対策を練ることになるでしょう。キーパーはノエルの遺体をベッドに安置するよう誘導してください。ほとんどパニック状態の使用人NPCたちをどうするかはPCが判断すべき重要問題です。使用人たちを全員逃げさせるというのが最も妥当でしょうが、その場合執事と家庭教師他数人の忠実な使用人だけは残りたがります。探索者の警告を冷静に分析すれば、召使いたちを盾として利用することを思いつくのも可能ですが、それは非人道的な策でもあります。
可能性は低いのですが、ノエルの遺体と病身のエゼキエルを見捨ててPCたちも逃げ出そうとするかもしれません。特に、使用人にまぎれて逃げる、あるいは使用人とは逆方向へ逃げるというのはいい案ですが、キーパーはそれは阻止してください。探索者たちはオークリィ一族の顔を知っています。この時点での探索者たちは館を囲むように森に潜伏しており、正門から続く道にはフィッツパトリックとラヴィニア、あとの3人は館の付近に散開しています。彼らはオークリィ一族を発見したら即座に攻撃します。
結局PCたちは館に篭城して敵の正体と出方を伺うことになる可能性が大です。キーパーは日没を告げた後にノエルを蘇生させてください。この最初の蘇生はPCが真に非日常に引きずり込まれる瞬間ですので、演出には念を入れてください。家族全員が集まって相談をしていると、メイジーがこの場にいるにもかかわらず、どこからかかすかにモーツァルトのピアノ協奏曲が聞こえてくる……などが演出の一例です。
蘇生したノエルは自分の状況を把握できずに朦朧状態になっています(ですからぼんやり歩き回ったり習慣からピアノを弾いたりするのです)。PCが声をかければ意識を取り戻しますが、当然その場面ではPCにもノエルにも正気度チェックが必要です。そして全員がこの怪異を受け入れたのち、シナリオは第二幕に移行します。
第二幕「灰の中から蘇るその日は」
シナリオ通りにキーパリングすればよい第一幕とは異なり、第二幕ではストーリーの流れがまったく定められていません。第二幕はオークリィ家対探索者の闘いそのものであり、両者の思惑、策略、運によって展開はいかようにも変化します。キーパーは公平無私かつ全力をつくして探索者を操り、PCと闘わせてください。
第二幕での天候は雪が降ったり止んだりを繰り返しますが、それほど強く降ることはありません。夜間には一時的に星が見えることもあります。また12月26日が新月にあたります。
以下に述べられるのは、シナリオ解決に有用である手がかりの数々と、各人の想定行動パターンです。なお、第二幕のプレイにはおよそ4時間を想定しています。
第9章 手がかり
■ 家系図
オークリィ家に残された古い家系図を検討して〈図書館〉と〈アイデア〉のコンビネーション・ロールに成功した場合、以下の「1」の考察を得ることができます。ただし「2」以降の考察を得るには、ひとつごとに、同じPCが続けて〈アイデア〉ロールに成功していく必要があります。途中でロールに失敗すればそこで終わりで、同じPCが再挑戦しても「2」以降の考察はもう二度と得られません。1.オークリィ家の者は非常に死亡率が低い。近代以前では多産多死が当たり前なのに、オークリィは生まれた子がほとんど成人している。特に、歴代の当主のうち病気や事故で亡くなった者はめったにいない。当主以外に関しては、多少の事故死や戦死は存在する。「4」の考察を得た者は、自動的に以下の文書を発見します。
2.オークリィ一族は長命の家系である。70あるいは80歳まで生きるのは珍しくない。
3.オークリィ一族の寿命は、時代を下るにつれて短くなっている。例えば現代あたりでは65歳前後が普通だが、スコットランド移住頃の先祖の平均寿命は90歳を越える。
4.事故死あるいは戦死した者は、例外なく故郷を離れて死んでいる。◇オーウェン・オークリィについて
オーウェン・オークリィは15世紀後半の人物である。彼は当時のオークリィ家当主の継嗣であり、若くしてヨーク家の騎士となった。当然オーウェンはヨーク家についてバラ戦争を戦った。40人の手勢を率いてオークリィの森に潜み、200の兵からなる敵軍を5日間あまりの戦いの末に打ち破ったとの逸話は有名である。この戦いで彼は‘不死の’オーウェンという名を冠され、部下からも激しく恐れられるようになったとされる。だがその後のオーウェンは特に目立つ武勇伝を残しておらず、2年半後にヨークにおける会戦で戦死した。
■ ドルイドとケルトの知識
このシナリオではバックボーンにケルト神話やドルイドの知識を利用していますが、シナリオのクリア自体にはそれほど必要なものではありません。そのためあえて詳しくは解説せず、グレン教授を通して概要をプレイヤーに伝えるにとどめています。ただしプレイヤーがそれ以上の知識を求めた場合、その努力の報酬として以下の内容を伝えてください。なお、ドルイドあるいはケルトに関して、キーパーがさらなる自分の知識(あるいは下調べの結果)をシナリオに投入することはまったくかまいませんが、必要以上の知識を与えてしまってプレイヤーに混乱をもたらすことには注意してください(例えばクー・フリンの死に様がこのシナリオにどう関係するというのでしょう?)。
◇ケルト民族の生死観
ケルトの民は非常に勇猛果敢な戦士として知られるが、それには理由がある。彼らは死というものを全く恐れておらず、それゆえ最後の一兵までが果敢に戦いえたのだ。彼らは、死者は神の国へ行き、しばらくしてからまた地上に生まれ変わると信じていた。この転生観ゆえにケルトは死を恐れる必要がなかったのである。また、ケルトの戦士は倒した敵の首を切断して、腰に下げて持ち帰った。ローマ兵はこの習慣を見てケルト民族は野蛮人なのだと考えたが、これはケルト民族が「首を切られた者は転生できなくなる」と信じていたためなのである。
◇ドルイドと生贄
ドルイドは実際に数多くの生贄を捧げたとされる。例えば彼らの行う占いの儀式では、人間の首筋にナイフを突き立てて、その流れる血で未来を占った。それ以外にも、焼き殺す、内側に釘の出た棺桶に入れる、生き埋めにする、などの手段で生贄を捧げた。しかし生贄にされる者がそれを恐れていたと思うのは間違いである。すなわちケルト民族は転生を信じるがゆえに死を恐れておらず、そのためむしろ名誉なこととして死を受け入れたのではないかと思われるからだ。
■ 納骨堂
納骨堂で第一に重要なものは、地下一階の最も奥の棚から多少はみ出すように置かれた棺です。すべての棺には死者の名を刻んだ銘板がつけられているはずなのに、この棺にだけはそれがないのです。この棺を発見するには、銘板すべてを確認することをプレイヤーが宣言するか、納骨堂内で〈目星〉ロールに成功しなければなりません。この棺の中には16年前に森の中の沼で溺れて行方不明になった(死体は未発見)とされる、エゼキエルの後妻アネットが眠っています。半ばミイラ化したこの死体を調べて〈医学〉+20%か〈応急手当〉−40%に成功したら、頭蓋と胸部肋骨に雑な外科手術の痕跡を発見します。切開されてから元に戻された跡であり、脳の一部と心臓がないのです。おそらく十数年前頃に行われた処理だとまでは分かりますが、それがアネットの生前になのか死後になのかまでは不明です。この事実からどんな推論を引き出すのかはプレイヤーに任されます。真相は、第一章で述べたように、病気(悪性腫瘍)で死の確定したアネットをエゼキエルが魔術実験のために犠牲にしたのです。エゼキエルは彼なりにアネットを愛してはいたのですが、どうせ助からない以上殺して悪いことはない、と考えたのです(苦しみを早く絶ってやるという気持ちもありました)。
次に、そして最も重要なのは、地下一階の隅の岩壁を押し込むことによって現れる隠し部屋です。当該の岩壁はアネットの棺のちょうど後ろに位置しますが、それに気づくには、棺を動かして壁を調べるとプレイヤーが宣言するか、地下一階を調べてまわって〈目星〉−30%に成功する必要があります。
この隠し部屋は歴代オークリィ一族の魔術実験室です。埃をかぶってはいますが、部屋には使い込まれた錬金術実験機器が整然と並べられており、〈オカルト〉に成功すればそれを確認することができます。一方の壁には本棚があり魔道書が並べられています――ブライドウェル版「無名祭祀書」、フランス語版「エイボンの書」、屍食経典儀、その他多くの呪文書です。本棚の前には木箱があり、時代も様々な手書きの古い文書が未製本のまま放り込まれています。このシナリオにおいて重要な手がかりはふたつあり、【エゼキエルの魔術書】と【ウェインガートナー教授の草稿・後半】です。
【エゼキエルの魔術書】は机の上に載せられているため探すまでもありません。これはエゼキエルが自ら記した魔術書であり、それがエゼキエルの筆跡であることはPCならばすぐに確認できます。内容は各種の呪文、《星の精の召還/従属》《門の創造》などですが、第1ページ目に特に明確に《母の招来》なる名の呪文と使用条件が記されています。このページを一目でも見たシュブ=ニグラスの子は、瞬間的かつ完全に《シュブ=ニグラスの招来》を覚えます。
【ウェインガートナー教授の草稿・後半】は館の図書室にあるものの後半ですが、古い羊皮紙や紙束(歴代オークリィ家当主による魔術実験の記録です)とともに木箱に詰め込まれています。探し出すには1回2時間かけての〈図書館〉ロールが必要です。2回の成功で2つの草稿が見つけられます。その内容は以下の別項を参照してください。
なお探索者たちはすでに納骨堂に侵入したことがあり、アネットの遺体を発見しています(納骨堂の鍵はトッドが開け、調査後に痕跡を消して立ち去りました)。しかし彼らはアネットの遺体に気を取られるあまり隠し部屋には気づきませんでした――エゼキエルがあえてこの位置に棺を置いたのにはその意図があったのです。
■ ウェインガートナー教授の草稿
ウェインガートナー教授とは、今から20年前にオークリィ家の歴史を調査に来た、ロンドン大学の歴史学教授です。この教授は頭が切れるというよりは論理が飛躍しがちな一種の変人だったのですが、偶然も手伝って、世界各地に残るシュブ=ニグラス伝説とオークリィ家の血を結びつけてしまったのです。そして教授の愚行はその考えを包み隠さずエゼキエルに話してしまったことでした。エゼキエルとしては教授を野放しにするわけにもいかず、やむを得ず彼を殺害して森に埋めて隠しました。エゼキエルはうまく立ち回って(魔術も使って)教授の痕跡を消し、事件を完全に隠蔽しました。しかし、教授の書いた原稿の一部が図書館に残っていることは気づかなかったのです。なおウェインガートナー教授についてならば執事のハロルドに尋ねれば簡単なことを教えてもらえます。
すでに述べたように、図書室に前半部分の2枚、納骨堂の実験室に後半部分の2枚があります。この草稿はプレイヤーに事件の背景を伝えるためのものであり、行動指針を決める一要素にはなるでしょうが、シナリオ解決に必須というほどのものではありません。◇前半の一
「――例えばダーナの最も有名な神々は皆血族である。バロールはルーの祖父でありルーは著名なドルイドであるカスヴァスの祖父でありカスヴァスは英雄クー・フリンの祖父である。神の力は血によって受け継がれるのだ。もちろん世界の神話に於いてそれは珍しいことではないがダーナ神話に関しては注目すべき点がある。即ち想像上の存在である神々と現実の存在であるドルイド等ケルトの民との近さである。実在の人間が神の血を引くと称されるのだ。これは西洋にはあまり例のない『神と人の近さ』である(東洋にはこのような神話が多い。例えば日本のそれは現人神と呼ばれる)。ケルトの血――」
◇前半のニ
「――次にダーナ神族の大母神ダヌー(アヌ)に関してである。ダーナには多くの有名な神がいるがそのほとんどは男神である。曰く魔眼のバロール、太陽神ルー、善神ダグザ、獣の王ケルヌンノス等。それに比べて大母神ダヌーに関して伝わる逸話はその重要度にもかかわらず驚くほど少ない。森と大地を尊ぶドルイドやケルトの民にとっては大母神こそが最も重要な神であるはずなれば。余はこれをドルイドが故意にダヌーの逸話を隠蔽しようとしたのではないかと疑う。ダヌーには何か隠さなければならない秘密がありドルイドは他の男神の逸話をもってそれを隠蔽したのではないかと。余はこの秘密の――」
◇後半の一
「――界各地に残る大母神『シュブ=ニグラス(シェブ=イグナス、シェブ=ニグラート)』と関連付けた仮説を立ててみよう。これによっていくつもの崇拝様式にパターンを見出すことができる。ドルイドの祭儀と各地に残るシュブ=ニグラス崇拝には強い類似性があり特に森を神格化することと生贄の習慣を解釈する鍵となる。しかし余は根源的な問いに突き当たる……大陸の違いさえ超え世界各地に残るシュブ=ニグラス信仰の正体は何なのか。大母神というアーキタイプで括るにはあまりにも伝承が似すぎている。あたかも真にシュ――」
◇後半のニ
「――も荒唐無稽ではあるがその考えを推し進めるうちに恐るべき解釈に行き当たった。例えば仮にダヌーが実在したとしよう。そしてダヌーの血が人の血に混ざりそれによって人間を超える能力を持った一族が実在したとしたら?そのような一族はまさに『シュブ=ニグラスの子』と呼ばれるに値する!余は考えるのだクー・フリンやドルイドの伝承は現実と真実の一端を語るものではないのかと。そして余はエゼキエル・オ――」
■ 広間の絵地図と岩の祭壇
広間の壁に掛けられた大きな絵地図は、プレイヤー用ハンドアウトのマップと同じようなものです。PCが森の地図を求めた(すなわちプレイヤーが「地図を探したい」「詳細な地図はないか」などと発言した)場合、真っ先にこの絵を思い出すことになります。この絵は300年程前に一族の者(名はヴォーン・オークリィ)が描いたものですが、地図としても実に正確で、さらにグランドファーザーや納骨堂の絵すら描かれています。この絵を観察して〈目星〉−30%ロール(絵を下ろして間近で調べるなら〈目星〉+20%ロール)に成功したPCは、厩舎の北北西1マイルあたりの位置の絵の具の色が妙に濃い事に気づきます。直接触って調べてみれば、この絵の具は後から雑に塗られたものであることが分かります。絵の具を剥がせば下から岩の祭壇の絵が表れます。
これ以外の方法で祭壇の位置を特定することはかなり困難ですが、不可能ではありません。以下にその方法を挙げます。
1.図書室でオークリィ家の者が残した日記や文献を調べる
方法は間違ってはいませんが、オークリィ家の者はそうそう尻尾をつかませるようなへまはしません。まずキーパーは1から10の数の中からどれかひとつを選ぶようにプレイヤーに言ってください。それが4時間で調べられる調査領域の1単位にあたります。つまり数をひとつ調べつくすには4時間かけて〈図書館〉に成功する必要があるということです。祭壇の場所に関する記述は「9」を調べたときに発見できます。
2.高い場所から見下ろして探す
原始的ですが効果的な方法です。オークリィ館の3階から探すなら〈目星〉−40%、館の屋根の上からなら〈目星〉−30%、グランドファーザーに登るなら〈目星〉+20%です。このロールは1人につき1日1回しかできません。もちろん昼間でなければなりませんし、屋根の上をうろうろしていては狙撃の的にされるかもしれません。なおプレイヤーが双眼鏡を欲しがったら、半分の成功率の〈幸運〉ロールに成功したPCが持っています。双眼鏡はこの場合の〈目星〉に+10%のボーナスを与えてくれます。
第10章 探索者の行動
第一幕での探索者の行動は不自然なほど慎重で、とどめを刺す気がないかとすら見えますが、これは彼らの信念に基づいた判断によるものなのです。探索者の行動原理は極めて明快で、しかも統一されています。
◆第一目的:仲間の安全
探索者たちは身の安全を最優先します。決して危ない橋は渡りませんし、相打ち覚悟で攻撃したりもしません。これはグラハムが提唱したことであり、彼の苦い体験が「身の安全」をこのグループの最優先目標に引き上げているのです。ですから敵が銃や魔術を使うようならば彼らはすぐに逃げます。そして奇襲や罠によって優位を確保してから改めて攻めるのです。
◆第二目的:一般人の安全
ほとんど重要度では第一目的に匹敵します。探索者たちは狂信的でも無慈悲でもなく、非常に人命を尊重します。決して一般人を傷つけることはしません。ただし探索者たちは愚かでもないので、他人よりは自分の命のほうを優先します。また、相手が魔術師であったり邪教徒であったりするならばまったく容赦しません。
◆第三目的:敵の抹殺
敵を倒すことは最下位の目標ですが、しかし決して諦めることはなく、敵を殲滅するまで手は緩めません。彼らは逃げることや卑怯な行為も厭いません。とにかく目的を果たせればそれでいいのです。力押しは避け、策を好み、常に慎重を期します。
探索者の思惑通りに事態が推移していれば(その可能性はかなり低いのですが)、第一幕終了時には、館にはオークリィ一族しか残っていない状況になっているはずです。以後、探索者の戦略は基本的に奇襲と波状攻撃になります。一般人を巻き込む危険が全くないのならば容赦なく呪文やショットガンを使用します。遺体を確認したいのであまり好みませんが、最終的には館や森に火をかけることも厭いません。
探索者の主戦力は炎の精(そしてビヤーキー)です。自ら姿をさらして的になるほど愚かな探索者ではありません。炎の精の前には扉やバリケードなど何の意味もなく、そしてあぶり出されてきたPCたちを銃で狙い撃ちするのです。木の上や雪の中に潜んで待つトッドのガロットも恐るべき伏兵です。魔法と銃の火力の大きさゆえ、基本的には探索者がPCたちに負けるようなことはまずないでしょう――エゼキエルがいなければ。
攻勢を保っているときの探索者の行動は明快です。まず召還呪文を使ってから攻め、MPが尽きるまで戦い、不利になったら逃げる。そして6時間休んでMPが全快したら、新たな攻撃方法を考える。PCの位置はトッドの尾行やビヤーキーによる偵察で把握しますし、蘇生エネルギーの影響で疲労や空腹も感じませんから、容易なことでは諦めることはありません。
探索者との交渉の絶対決裂ラインは、PCが探索者の誰かの死体を蘇生不能にすることです。こうなるともはや後は戦闘を繰り返して決着をつける以外にありません。おそらく最後のひとりとなった探索者は森に火をかけるでしょう。
■ キーパーの戦略:探索者
キーパーは探索者の知性と戦闘力を見誤ってはなりません。手加減なしに戦ってください。卑怯で狡猾な策を思いついたら遠慮しないで下さい。人質をとったりだまし討ちをしたりしてください。強そうなPCから狙い撃ちして、確実にとどめをさしてください。これは真剣勝負なのです。PCに思いつける程度の策を探索者が思いつけないはずはありません。第ニ幕の序盤が最初の山場になるでしょう――探索者はこの時点では圧倒的に有利であり、PCを皆殺しにできると信じて疑いません。キーパーはエゼキエルを投入してそれを阻止してください。
PCと探索者が交渉過程に入った場合でも、ことがすんなりと運ぶとは期待できません。特にバートラム・シャンクとトッド・クオックは感情のレベルでオークリィ家を憎んでいるので、彼らを納得させるには、オークリィ一族の者もまた「人間」なのだということを理解させる必要があります。キーパーはプレイヤーの交渉術を公正かつ冷静に判断し、それを探索者たちの過去や行動原理と比較しつつ対応を決めてください。
第11章 エゼキエルの行動
ノエルが蘇生したのとほぼ同時刻に、危篤状態だったエゼキエルは意識を取り戻します。彼は自分に何が起きたのかを即座に把握し、我が子に何かあったのだと考えます。そして銃を手にして窓から出て壁を登り(今のエゼキエルの能力値ならばそれほど困難な行為ではありません)、屋根の上に身を潜めて状況の観察をはじめます。
エゼキエルは事態が完全に把握できるまで我が子たちの前に姿を現そうとはしません。蘇生エネルギーの発動が事故死や一族間での殺人によるのもである可能性も否定できないためです。そしてエゼキエルは早い段階で探索者の存在と目的を知り、我が子らをこれ以上巻き込むまいとして、探索者たちを相手に闘いを開始します。しかしエゼキエルといえども優れた探索者5人を同時に相手にはできませんので、やむなく奇襲の機会を伺うのが主戦術になります。エゼキエルは「探索者たちは、エゼキエルは危篤なのだと思い込んでいる」と正しく推論します。つまり当面最も効果的な戦術は、自分が活動していることを探索者に知られないように行動することです。
基本的な行動パターンとして、まずエゼキエルは自分に《肉体の保護》をかけて潜伏します。そして最も必要な瞬間(例えば戦闘が起きて我が子が危なくなった時)に陰から《ヨグ=ソトースのこぶし》か《破壊》をかけるのです。あるいは《猟犬に命令する》の呪文を使っておき、猟犬たちに探索者を襲わせるかもしれません。
エゼキエルは目覚めてから1日以内に、自分のMPが非常に早く回復してゆくことに気づきます。するとエゼキエルの行動はやや動的になり、攻撃呪文を連発したり星の精を使ったりします。しかし自分の正気度ポイントの少なさは承知しているので、黒い仔山羊はできるだけ使いません。一人でシュブ=ニグラスを《招来》することもしません。なおエゼキエルは非常に夜目が利きます。ほとんど昼と変わらずに見えるのです。
■ キーパーの戦略:エゼキエル
エゼキエルはPC対探索者の戦いを複雑にする第三勢力、不確定要素です。プレイが膠着状態に陥ったとき、あるいはプレイヤーが次の行動指針を見失って困っているようなときにはエゼキエルを使ってください。そして何よりキーパーはエゼキエルを使ってシナリオを混乱させてください。エゼキエルは探索者を攻撃し、それによって探索者はオークリィが恐るべき魔術師であるという確信を深めます。我が子を想ってのエゼキエルの行為がかえってPCを追い詰めるのです。そのためPCはいっそう深刻な行動選択を迫られます。エゼキエルを説得するのか、エゼキエルと協力して探索者を攻撃するのか、あるいは……エゼキエルを殺すのか。
キーパーはエゼキエルとPCをできるだけ接触させないようにしてください。少なくともエゼキエルのほうからPCに接触してくることはありません。そして、エゼキエルは高い知性を持ち、かつ自分が正しいと信じることを行っているということを忘れないでください。彼は強く狡猾で、決して諦めません。シュブ=ニグラスの子が厳密には人でないことを誰よりもよく知っており、それゆえ休戦に応じもしません。ある意味ではPCにとって探索者よりも手ごわい障害なのです。
エゼキエルの存在は、シュブ=ニグラスの子の行く末に対する警告の意味も持っています。エゼキエルの正気度ポイントは開始時からかなり少なく、加えて呪文を多用することによりその正気は急速に失われていくはずです。つまり、普通にプレイすればエゼキエルはほぼ確実かつ最初に仔山羊に変身するということです――もちろんその意味に気づくかどうかはプレイヤー次第ですが。
第12章 PCの行動
このシナリオはプレイヤーにとって簡単とは言えません。トゥルーエンドと高得点を目指すなら、プレイヤーは謎解きと交渉と戦闘のすべてをこなさなければならないのです。明確な行動指針を欠いたパーティーを待つものは、ただ混沌とした戦闘の連続のみです。この章では、PCの行動が説得以外の方向に流れていったときの想定行動パターンとその対処方法を挙げてみます。
◆森から逃げ出す
ある意味非常に賢明な考えですがそれはシナリオの放棄に他ならず、何の解決にもなってはいません。蘇生効果領域から出た蘇生者は死亡するというルールによってPCの逃亡は効果的に阻止されますが、その行為は蘇生効果領域の存在をプレイヤーに知らしめる手がかりとなるでしょう。
もちろん蘇生者を見捨てて逃げることは可能です――PCが二人以上そうした場合にはシナリオを終了させてしまってかまいません。後日談として、森が探索者によって焼かれた結果、残った家族は全滅することになります(PCは大幅な正気度減少)。さらに探索者の追跡は決して止むことはなく、逃げたPCも遠からず命を落とすでしょう。
◆戦う
蘇生ギミックの存在を推理したプレイヤーたちは「オークリィ家の人間は決して死なない。ならば探索者たちなど恐れるに足りない」と考えて戦闘で勝負をつけようとする可能性があります。しかしそれが誤った考えであることはいずれ判明します。探索者たちもまたこのシナリオでは不死であり、しかもMP回復の早さゆえにむしろシュブ=ニグラスの子より有利な程なのです。死と蘇生を繰り返すうちに、プレイヤーたちもこのシナリオは単純な力押しで解決するのは難しいことを悟るでしょう。
◆人を呼んでくる
使用人を逃がすときに警察に知らせるように頼んだり、PCが単独でこっそり逃げ出して友人や警察に頼ったりした場合のことです。これは探索者にとってはかなり嫌な事態であり、確かにある程度の有効性を期待できます。しかし実際にはあまり賢明な策ではなく、無関係の人間を戦いに巻き込むだけに過ぎません。
キーパーとしては、外部の人間を自由にシナリオに生かしてみてください。警官の5人や10人ぐらいでシナリオが崩壊することはありませんし、プレイヤーが望むように事態が好転することすらないでしょう。炎の精ひとつで警官隊は総崩れになるはずです。それに今のエゼキエルにとっては警察官の命などどうでもいいものであり、我が子を守るために必要とあらば躊躇なく殺すでしょう。もしくは警官隊が黒い仔山羊に遭遇してしまって皆殺しにされるかもしれません。そして警官は蘇生し、事態は無駄に混迷の度を深めていくのです。
ただしこの状況はシナリオの本筋とは言えず、さらにはキーパーの負担とプレイ時間を増大させますので、キーパーは進行状態に応じて適当にカットしてもかまいません。
◆シュブ=ニグラスを招来する
十分に実行可能で、しかも絶大な効果を期待できます。先に述べたように、シュブ=ニグラスの子は一人いるだけで《招来》の可能性が10%上昇します。全員がMPをつぎ込めば容易にシュブ=ニグラスを招来できるでしょうが、詠唱中に探索者が襲ってくる可能性が非常に高いため、防衛用の人員や策も必要になるでしょう。
招来されたシュブ=ニグラスは、近くに敵がいれば襲いかかります。さしもの探索者といえどシュブ=ニグラスに襲われては壊滅必至です(全滅するとは限りませんが)。シュブ=ニグラスが探索者を攻撃する場合には噛みつきがメインで、そして体液を吸いつくされたキャラクターは蘇生エネルギーをもってしても蘇生不可能です。もしも近くに探索者がいないのならば、PCは自分の窮状を訴えることによって〈説得〉+20%ロールで彼女を説得しなければなりません。それが成功ならばシュブ=ニグラスは黒い仔山羊を5匹ばかり森から呼び出してPCに預け、そして帰っていきます。この時にPCは自分も連れて行ってくれるように〈説得〉を試みることもできます。ロールに成功ならばシュブ=ニグラスは望みを叶えてくれます。
終幕「涙に暮れる日」
第13章 エンディング
無限の蘇生を繰り返す戦いとはいえ、いずれは必ず正気が尽きます。勝利を手にしたのはどちらでしょうか。ここでは可能性の高いエンディング案を3つ挙げますが、もちろんこれ以外の結末はいくつも考えられます。決着さえつけばどのような結果が出てもかまいません。重要なのは‘終わる’ことだけなのですから。
■ 第一の解決策:和解
「シュブ=ニグラスの子はもはや事実上無害な存在であり、人間にとっての害にはならない」ということを探索者に信じさせれば、完全な休戦協定を結んで事態を終結させられます。しかしそのためには単なる説得だけでは駄目で、満たさなければならない条件がひとつ、あるいはふたつあります。
第一は「蘇生の魔力は森に依存しており、シュブ=ニグラスの子の持つ能力ではない」ことを探索者に納得させることです。これをクリアしなければ探索者たちがオークリィ一族を見逃すことはありません。そしてこれを探索者に納得させるには、まずPCたち自身が蘇生メカニズムについて完全に理解しなければなりません。つまり前提条件としてプレイヤーには蘇生メカニズムの正体を突き止める必要があり、これはまさに観察力と推理力にかかっているのです。
さらに完全に探索者を説得するためには、第二条件として「探索者を殺し、さらに蘇生メカニズムの推理を突きつけてその探索者の命を人質に取る」ことが有効です。つまり、もし森を焼き払えば探索者も蘇生が解けて死ぬぞ、という脅しです。もちろん蘇生メカニズムに関してある程度把握していなければこの策は立てられませんが、探索者たちは仲間の命を非常に重視するため、実行できればこの上ない威力を発揮します。なお、もしも第一条件だけしか満たさずに探索者の説得に当たった場合、最悪のパターンとして、探索者が森を焼き払おうとする可能性が大です。
ことが上手く運べばオークリィ一族と探索者は和解できるはずです。両者の対立を恒久的に回避するには、蘇生キャラクターの完全回復を待ってからオークリィの森を焼き払うべきでしょう(これもPCが提案すべき説得案のうちです)。すべてが終われば、探索者たちとの別れでシナリオは終了します。「だが忘れるな、オークリィよ。確かに今の君たちの血はほとんど人間と変わらないが、何時の日か再びシュブ=ニグラスの血が目覚め、エゼキエルをも上回る恐るべき魔術師が生まれないとも限らない。そして、その時には容赦しない。我々はいつまでも君たちを見ているぞ――何年、何十年経とうとも。『その時』などが来ないことを祈ってはいるがな……」
これはシナリオデザイナーの想定した一応のトゥルーエンドですが、プレイヤーがさらに良い解決法を思いついたならば、それはまさにプレイヤーたちの真の勝利と言えるでしょう。
■ 第二の解決策:対決
探索者全員を滅ぼしてその蘇生を封じてしまえば、それはオークリィの完全勝利です。たやすいことではないでしょうが不可能でもありません。
まず必要なのは、やはり蘇生メカニズムを推理することです。少なくとも蘇生効果領域に関してだけは把握しておく必要があります――それさえ知っていれば探索者の死体を蘇生効果領域の外に置くことによって蘇生を阻止できるからです。敵の蘇生を封じたならば勝利は十分ありえます。あとは全力で戦うだけです。
ここで問題となるのは、探索者側もまた蘇生メカニズムについて推理して同じ策を採ってくることです。PCがやることを理解できないほど愚かな探索者ではありませんし、そうなると戦いは勝者なき殺し合いに堕します。そして探索者が最後の一人となった場合、その探索者はほぼ間違いなく森に火をかけます。全面対決を選んだプレイヤーはそこまで見通してさらにそれを防ぐように立ち回るべきなのです。おそらくPCの勝利は苦いものとなるでしょう。
■ 第三の解決策:母
シュブ=ニグラスを召還して探索者たちを完全に滅ぼしてもらう。第二の策と似てはいますが、さらに安易で直接的な解決です。
この解決案は、ほとんど罠にも等しいものです。賢明なプレイヤーならばまさかそんなことはしないでしょうが、焦りにかられた未熟な(あるいは確信犯的な)プレイヤーならば目の前に置かれた《招来》の呪文に飛びついてしまう可能性は十分にありえます。シュブ=ニグラスを《招来》して何が悪いのかというと、それはひとえに正気度ポイント喪失の大きさゆえです(呪文をかけるために1D10ポイント、さらにシュブ=ニグラスを見て1D10/1D100ポイント)。そのリスクを承知の上ならば、あとはもうプレイヤーの自由です。確かに母なるシュブ=ニグラスは探索者を滅ぼしてくれるでしょうが、PCも少なからず発狂して仔山羊に変身するでしょう。誰か生き残ったとしてもそれはあまりにも惨めな勝利です。
カーテンコール
シナリオは終了しました。得点と評価基準を発表し、感想戦を行ってください。
第14章 得点計算
得点は基本的に減点方式で採点します。
原点 100pts. シュブ=ニグラスの子の死亡 1回につき−5 シュブ=ニグラスの子が仔山羊に変身 1人につき−25 シナリオ終了時にシュブ=ニグラスの子が死亡している 1人につき−15 探索者以外の人間NPCの死亡 1回につき−8 探索者以外の人間NPCが真の狂気になった 1人につき−20 シナリオ終了時に探索者以外の人間NPCが死亡している 1人につき−20 ウェインガートナー教授の草稿をすべて集めた +5 †最初のノエルの死は死亡回数にカウントしません。
††エゼキエルの死と変身もカウントしません。
得点 ランクと評価 100+〜90pts. S……Superior! You are an Excellent Player! 89〜70pts. A……Good Player. Congratulations on your success! 69〜50pts. B……Average. Do your best to the next play! 49〜30pts. C……Poor. Think over your act. 29pts.− D……Donkeys. I don't care.
以上の基準からお分かりのように、このシナリオがプレイヤーに求める上手い/優れた/的確なプレイとは、「できるだけ少ない犠牲で事態を解決する」ことです。肉を斬らせて骨を断つ、あるいは、目的のためには手段を選ばず、という考え方が間違っているわけではありませんが、「自分さえ生き残ればいい」よりも「仲間を助けてかつ自分も生き残る」ほうがより高いゴールであるということです。
第15章 キーパーへ
このシナリオは、謎解き能力にも劣らず交渉能力を問うものです。探索者たちは感情に動かされず、決して単なる〈説得〉ロールで納得させられるようなことはありません。プレイヤーには熱弁ではなく交渉材料と説得力を求めてください。
しかしながら、プレイヤーの性格や“クトゥルフ”プレイ経験の量にもよるのですが、プレイが説得ではなく対決の方向に向かってしまうことは十二分にありえることです(基本的に通常の“クトゥルフ”における狂信者や魔道師は絶対悪であり、それゆえ経験あるプレイヤーほど交渉に思い至らないのかもしれません)。しかしその場合キーパーとしては、路線を誘導して説得にもっていこうとすべきではありません。無能さにせよ悪ノリにせよ確信犯にせよ、プレイヤーは己の下した決断に責任を持たねばならないのですから。
総プレイ時間には6時間以下を想定しています。6時間を大幅に越えそうになるとしたら、その原因はプレイヤー間の相談に時間をかけすぎるからでしょう。放っておけばプレイヤーはいつまでも話し合いを続けかねませんので、キーパーは適時襲撃イベントを起こすなどしてプレイを進行させてください。特に、材料が足りない状態での推理は時間の無駄ですので、誘導でない程度に調査を促した方がよいでしょう。
戦闘の多いシナリオです。実際のプレイに際しては確実に炎の精とビヤーキーが登場することになりますので、キーパーは事前に数体分のモンスターデータを作成しておいてください。また、戦闘ルールや各呪文の使用方法についてもきちんと把握しておくべきです。
なおトッドのガロット(絞殺ひも)は絶版サプリ“クトゥルフ・バイ・ガスライト”に登場した武器です。ダメージ算出方法などは〈グラップル〉による首締め窒息攻撃と同じですが、STR対抗で脱出することができないのが違いです。
第16章 ハンドアウト
画像はすべて別ウインドウで開きます。
キャラクターイラスト1 キャラクターイラスト2 キャラクターイラスト3 キャラクターイラスト4
オークリィ系図
マップ・館
マップ・森
文章
デザイナーズ・ノート
外なる神を一柱ずつ使ってシナリオを書こうという個人的連作シナリオ「アウター・ゴッズ」の最後がこのシナリオにあたります。すなわち副題は“CHILDREN of SHUB-NIGGURATH”。まんまシュブ=ニグラスの話です。
“バーニング・コート”はいわゆる箱庭型シナリオの典型です。舞台とNPCについては詳細に設定していますが、あらかじめ用意されたストーリーや流れは存在せず、プレイヤーはシナリオに投げ込まれて好き勝手に動くことになります。戦うもよし、逃げるもよし、交渉も探索もよし、シュブ=ニグラスを招来してもよし。結果が出せれば何をしてもいいですし、結果が出せなくて全滅するのもまた自由です。
私はあらかじめストーリーを想定しておくということが嫌いですし、そもそもTRPGに物語性やストーリーが必要だとも思っていません。最後はPCが勝たなければならないとは思いませんし、PCの死には常に意味があるべきだとも思いません。すべてが終わったあとで、個々人がそこに何かの意味や物語を勝手に見出せばそれで十分でしょう。
ですから私は、このシナリオをキーパリングする皆様には、特定の方向にプレイヤーを誘導するのは避けて頂きたいと思います。このシナリオはプレイヤーが何をしてもいいように作ってある分、逆に言えば何をしたらいいのが明確でなく、キーパーがちょっと誘導すればプレイヤーはそれに従いがちです。しかしそれではシナリオの理念に反するというものであり、せっかく自由度の高いシナリオなのですから、思う存分自由に動いてもらいたいものです。その結果が敗北や全滅であろうとも、それがプレイヤーの選択であるならばいっこうにかまわないではありませんか。
シナリオの内容は、まあいつもどおりウケ狙い優先の大ネタです。いわゆる逆転の構図というやつで、いつもショットガン片手に怪物を追い回してるプレイヤーに、たまには逆に怪物になって探索者に追われてみたらどうよ?というあたりが発想の起点です。探索者チームは毅然とかっこよく、ヒーローっぽく演出してみてください。聖書がお手元にあるなら、適度に引用セリフを吐きつつ戦うとフィッツパトリックが引き立つと思います。
ところで、シナリオが全面対決に終わったプレイの後、プレイヤーのひとりに「いきなり襲われて、とても話が通じる相手だなんて思えなかった。シナリオ前半に例えば『帰省時の汽車の中で探索者と何気ない会話を交わす』というようなイベントがあれば、こっちとしても相手と話をしてみようという気になったと思う」との意見を言われました。
それも一理ありますが、私としてはそこまでプレイヤーを甘やかす気はありません。プレイが説得路線に至るために必要なのは、感性による判断(あいつらも本当はきっといい奴らなんだ。話せば分かってもらえるさ!)ではなく理性による判断(戦って勝てるかどうか疑問だから、なんとか戦闘以外の解決策を見つけねば)であって欲しいと願うからです。
確かに難易度の高いシナリオであり、全滅も十分ありえます。ですが私は、ヒント満載で誰にでも解けるような低難度シナリオをプレイするほうがむしろプレイヤーに失礼だと思います。そんなクリアできて当然のシナリオをクリアしたって、何か意味があるんですか? 失敗する可能性があるからこそ成功が輝くのですし、プレイヤーが全力を尽くした上でならば、全滅するのもまた一興というものでしょう。
ちなみにタイトルの意味は「火刑法廷」であり、罪が焼き払われて消え去るという意味をこめています。元ネタは例によって推理小説ですが、小説と当シナリオの内容はまったく関係ありません。
それでは皆さんのよきセッションを祈って。 Have a nice Christmas!
参考文献
☆『ヴィジュアル版 世界の神話百科 ギリシア・ローマ/ケルト/北欧』――アーサー・コットレル、原書房。
☆『ケルト 生きている神話』――フランク・ディレイニー、創元社。
☆『ケルト神話』――プロインシァス・マッカーナ、青土社。